大工・鍛冶・左官で対戦してきた
『庭から眺める行徳汐浜』のつづきです。
https://www.yawata-sakan.com/blog/23164
背景となる鏝絵が完成したところで、井戸屋形を紹介したいと思います。
日本の井戸屋形と言えば木の骨組みに瓦屋根のイメージ…ですがこちらはアイアン製。
クリエイターはmetalsmith iijiの伊藤さん。
渡英修行の末、千葉県八千代市にアトリエを構えている鍛冶職人です。
アイアンとは思えない軽やかさとしなやかさ。
稲穂がいまにも揺れ出しそうです。
屋根上の風見鶏は鶏ならぬ鯨。
以前地元でよく見かけられたという蓮田や小魚も取り入れたとのこと。
鍛金で花弁の薄さや葉の筋まで表現できるのですね。
さてここで左官屋の話に戻ります。
鏝絵につづいて土間はモルタル造形で石畳調としました。
こちらにも蓮田のモチーフを取り入れています。
大屋さんに前もって捨てコンしていただいた土間へモルタルを流し込んだところ。
砂セメは造形対象により配合を調整しており、擬石の場合は擬木よりも荒い砂を選んでいます。
締まってきたところで目地切りよーいドン。
同時進行で石畳のテクスチャにカービングします。
削った翌日には塗装ができます。
くすみやすいピンクは鮮やかめに差しておくと経年変化で良い赤みになります。
グリーンとイエローも鮮やかめに。
塗料はしゃばめにしておくと満遍なく浸透して馴染みがよくなるほか、「やっべ濃すぎた!」を回避できます。
既製品にはないオリジナリティとあたたかみがあるのではないでしょうか。
主役はあくまで井戸なのでアクセント程度に。
ご当地ものはまだつづきます。
↑写真中央部の白丸、何かおわかりでしょうか。
「よかったら使って」と大工の大屋さんからお預かりしていました、市川産の貝。
こちらを石畳に忍ばせてみました。
埋め込んだのはカービングの前。
貝殻はいずれは風化するため公共施設で使われることは少ないですが、
ご自宅ということもありお施主さまは快諾して下さいました。
ブロック塀への鏝絵と土間への石畳造形、これにて左官工事は完了です。
夕方ごろ、鍛冶屋の伊藤さんがお見えに。
貴重な女性職人のツーショットです。
追加で持ち込まれた蜻蛉のマグネット。
「「羽…?!!?!」」と左官屋はボキャブラリー喪失。
加工した銅板を鋸でひとつひとつ空けたそうです…。
仕上げに大工の大屋さんの井戸蓋が登場。
二枚割なのは、隙間から雨粒が井戸底へ落ちる音が好きなの、と言うお施主さま立ってのリクエストから。
山武杉と檜を使用。
赤み強めの柾目が美しいです。
持ち手は柾目と垂直に桟を彫ることで、金具を使わない反り止めの役割も担っています。
伝統的な工法で『吸い付き桟』と呼ぶらしいです。
こうして地元愛が凝縮した小空間に仕上がりました。
後日、鏝絵右手の新設倉庫に建具がついたので、大屋工務店さんのSNS等をご覧下さい。
さいごにお施主さまも撮ってくださいました。
大工、鍛冶、左官
同世代異業種の職人たちによるナイスバトルでした。